令和4年7月1日 以降の記事の目次
【解説】『梅毒は終わった病気ではない』世界的増加の背景に「HIV治療の進歩と関連性あり」専門家が語る実態
非接触の時代になっているはずなのにということですが、大阪府や全国で急増している「梅毒患者」。性行為など粘膜や皮膚の接触で感染するもので、放置すると脳や心臓に深刻な影響を及ぼす可能性もあるといいます。コロナ禍で人との接触が制限されている中、大阪では特に『20代の若い女性の患者』が増えているといいます。大阪公立大学大学院・城戸康年教授にその実態について詳しく話を聞きました。 【映像】梅毒は放置すると『脳や心臓に深刻な影響』梅毒の危険性も詳しく解説
全国で見ると梅毒患者数は、今年7月3日までに5615人、前年同時期比で1.6倍のペース、年間患者数が1万人を超えるペースです。そして大阪も前年同時期比で約2倍ペースで増えています。
梅毒とはどんな病気なのかというと、性行為など粘膜や皮膚の接触で感染するもので、感染後約3週間は感染した部位(陰部や唇そして口の中など)にしこりができ、リンパ節が腫れる。感染後数か月で手の平や体に赤い発疹ができるなどとされています。 ---痛いとか痒いとかそういう症状はあるのですか? 「感染した部位にしこりとか粘膜の潰瘍みたいなものができると、多少の痛さはありますが、手の平に発疹が出るような程度では大きな不快感というのはあまり訴えられない人が多いです」 ---ではわからないまま感染した状態で人にうつすこともあるということですか? 「はい、それはかなり多いです」
---放っておくと色んなリスクがあるんですよね? 「はい。例えば発疹がある程度であれば、そんなに大きな問題にはならないと思われがちですが、重要なのはそれが発展すると脳神経の中に入っていったり、あとは心臓の大動脈に大きな病気を起こしたりする。もう一つは若い女性が感染すると母子感染を起こして子どもに重篤な状態を起こすので、それは非常に心配される事態です」 ---妊婦さんが感染すると、ということなんですね。血液検査して薬で治療ができる病気であるということですが、検査自体は負担の大きいものなんですか? 「いや、もう普通に血液検査は一般的に健康診断で行うものと全く同じですので、大きな負担なく検査できると思います」
そしてこんなデータもあります。年代・性別で見た梅毒患者の内訳なんですけれども、男性を見ると、大体どの年代も同じような割合。ただ女性に関して言うと20代が圧倒的に多い。また男性の患者数が女性の2倍以上というのもわかっている。そして大阪では若い女性患者が増加しているというデータもあるんですね。 ---城戸先生の見立てですが、実は数年前から増えていたんだと? 「2000年代までは世界的にも梅毒というのはもう抑えられた終わった病気だと思われていました。でもそこから実は徐々に世界的に梅毒というのは全体で増加傾向でした。その増加傾向のときに誰が増加したかというと、男性間の同性愛者の集団。その集団の中で比較的増えていって、これが世界的に伝播してきました。日本ではそれが2015年ぐらいから状況が変わってきて、その2015年までは発生患者の多くが男性患者さんだったのですが、それから2015年以降グラフでもぐっと伸びていますが、徐々にその男性集団というところから、女性にもうつってきました。なので今は3分の1が女性、3分の2が男性と。そうすると一般の人にも多く感染する機会が増えてきたと。これが世界的に起きています。ではどうして先に男性の同性愛者の間で増加したかというと色々な説があるのですが、2000年まではHIVの治療があまりなかったので、活発な性活動というのが全体的に抑えられていたと。しかし今HIVというのが治りはしないけれど死なない病気になって、そこで性活動が全体的に増えてきて、その結果あまり安全ではないセックスというのが増えてきて、それが土台になって梅毒が増えてきたのではないかと一つは言われています」
---先生が今おっしゃった話で言うと、事実そういうデータがあるわけで、男性間の性交渉で感染が増えていったというのは大体2015年ぐらいまでということなんですか? 「そうです、2015年まで徐々に上がっていますよね。その間までは、その報告のほとんどが男性の報告でした。それが2015年16年から急増しているように見えますが、これが徐々に男性間の同性愛者の集団から、第1回目は性風俗の従事者、それからあまりそれとも関係ない一般の人にも拡大し、若い人に広がってきたという状況だと思います。HIVと梅毒であったら、梅毒の方が感染力が一般的には強いです。何故ならば、いわゆるオーラルセックスでも感染力が十分高くて、かなり気をつけて避妊具などを使用しないと、かなり容易にうつる感染症です」 ---気づかないうちにうつっていたりとかするっていうのはあり得ることなんですか? 「無症状といっても日常生活では感染しませんから、そういう不特定多数なりのパートナーがいらっしゃる方でそのようなアンセーフセックスの経験があれば、それはいくらでもそういう可能性はあるということですね」 ---これだけ継続した拡大傾向があるということは、不特定多数の人とお付き合いをしていなかったとしても、そういうことが起こり得る可能性っていうのは今後あり得るということ? 「おっしゃる通りです。これが今は漏れてきて、一般の集団にも感染が広がってきた状態ですから、そうすると自分はそういうこと関係ないと思っていても感染するのが性感染症の一つの重要な特徴ですね」 ---例えば私は自分のことで言うと、年に1回必ずこういう検査をするというのを一つのルールとして決めていて、HIVも含めてですけれども、そういうときに性感染症の検査をするというのは推奨されていることだと思うんですが、知らないうちに感染している可能性もあるとすると、大体どれぐらいのペースで検査することを先生はおすすめしますか? 「もちろんどのような生活を送っているかは様々なんですけれど、ごく一般的に考えれば、頻回の検査はそれほどリスクが高くない人はあまり意味がないと思いますので。例えば今おっしゃったように1年に1回の、性感染症ではHIVとか梅毒は保健所などで匿名で無料でも検査ができますので、そういうのを利用するというのは非常に良いことかなと思います」
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